認知施策の3つ目、いよいよSNS編へ
これまで「認知編その1(SEO)」「認知編その2(MEO)」と、検索や地図から見つけてもらう方法についてお話してきました。
今回からいよいよ、皆さんにとって身近なSNSで認知を広げる方法について取り上げていきます。
よくこんなお悩みを聞きます。
- 何を投稿したらいいか分からない
- 続けるのが大変で、いつも三日坊主になる
- バズらないと意味がない気がする
- そもそも会社でSNSって本当に必要なの?
この記事では、まずはSNSの“立ち位置”を整理しつつ、中小企業がSNSとどう付き合えばいいかの考え方をまとめていきます。
検索だけに頼れる時代は終わった
かつては、Google(検索エンジン)一強の時代でした。何か知りたいときは、とりあえず検索ボックスにキーワードを打ち込む。そんな行動パターンが当たり前だったと思います。
その頃は、検索エンジンにだけ対策しておけば、十分に認知を獲得できました。いわゆるSEO対策だけで、「見つけてもらう」ことができたのです。
しかし、インターネットとスマホが普及し、誰もが自由に情報発信できるようになった結果、人々はそれぞれ自分の“好きな媒体”で情報を集めるようになりました。
その結果、
- 若い世代は検索よりもSNSで情報を探す
- 主婦層はInstagramの投稿やストーリーズを参考にする
- 経営者はFacebookなどの人脈ベースの情報を重視する
- 学びたい人はYouTubeで深い動画コンテンツを見る
というように、検索エンジン以外の場(=SNS)へ人が分散していきました。
つまり今は、「検索エンジンだけ対策しておけば認知が取れる」時代ではなくなったということです。
SNSは「売る場所」ではなく「ファンを育てる場所」
まず最初にお伝えしたいのは、SNSは“売り場”ではなく“ファンづくりの場”だということです。
SEO(検索)は、「今すぐ知りたい」「今すぐ買いたい」人に強いチャネルです。MEO(Googleマップ)は、「今すぐ行きたい」人に強いチャネルです。
一方でSNSは、
- 今は買わないけれど、なんとなく覚えておいてくれる人
- 困ったときに思い出してくれる人
- “いい会社だな”と時間をかけて感じてくれる人
こういった“そのうちお客さんになる人(潜在層)”に向けた施策です。

SNSを続けていると、
- 「なんとなくこの会社のこと知ってる」
- 「雰囲気が良くて、安心して相談できそう」
- 「困ったらここに頼もうと思っていた」
このような状態が少しずつ増えていきます。だからSNSは短期的な売上というより、長期的なファンづくりのための施策と考えるのがポイントです。
SNSが向いている会社・向いていない会社
SNSは万能ではありません。向いている会社と、SNS単体ではあまり効果が出にくい会社があります。
◆ SNSが向いている会社
- 写真や動画で“見せ場”が作れる業種(美容・整体・飲食・小売・工務店など)
- ビフォーアフターや施工事例が強みになる会社
- スタッフの人柄や会社の雰囲気が魅力になる会社
- BtoC(一般の方向け)の商品・サービスを扱っている会社
- 採用を強化したい会社(社内の空気感を見せたい場合)
◆ SNS単体だと効果が見えにくい会社
- BtoBでニッチな商材(工場設備、産業用部品など)
- 写真をほとんど出せない業種
- 顧客がそもそもSNSをほとんど使っていない業界
ただし、こうした会社でも「採用」や「会社の信頼づくり」の面ではSNSが力を発揮するケースも多いです。
SNSを始める前に決めておきたい3つのこと
多くの会社がSNSでつまずくのは、「とりあえず始めてしまう」からです。始める前に、たった3つのことを決めておくだけで、運用がぐっと楽になります。
① 誰に届けるのか(ペルソナを決める)
まずは「誰に見てほしいSNSなのか」をはっきりさせましょう。ペルソナとは獲得したいターゲット像のことです。
- 30代・子育て中の女性?
- 40代の中小企業経営者?
- 20代の求職者?
- 地域に住むシニア層?
理想のお客さんを“たった1人”イメージして、その人に向けて発信するつもりで書くと、投稿内容がブレなくなります。
② 何を伝えるのか(発信の軸を決める)
SNSでうまくいっているアカウントは、投稿に一貫した“軸”があります。
例えば、こんなテーマがあります:
- 業界の豆知識・お役立ち情報
- 仕事の裏側・現場の様子
- スタッフ紹介・人柄が伝わる話
- ビフォーアフター・事例紹介
- よくある質問への回答
- 会社の価値観や大切にしていること
- お客様の声やインタビュー
この中から自社らしいものや自社で発信できそうなものを3つ選んでみてください。投稿のネタに迷いにくくなりますし、SNSアカウントの内容が整い見た目もきれいになります。
③ どのSNSを使うのかを決める
すべてのSNSをやる必要はありません。むしろ中小企業こそ「1〜2つに絞る」ほうが成果が出やすいです。
ここからは、それぞれのSNSの特徴とユーザー層をざっくり整理してみます。
主要SNSの特徴とユーザー層
◆ Instagram(インスタグラム)

特徴:
- 写真・動画・世界観で魅せるSNS
- 美容院、飲食店、整体、工務店、小売、ハンドメイドなどと相性が良い
- 「なんとなく良さそうな雰囲気」を伝えるのが得意
- リール(短い縦動画)で一気に認知を広げられる
ユーザー層:
- 10〜40代の女性が中心
- 主婦層、ライフスタイルを大事にする層
- 見た目や世界観で選ぶ傾向のあるユーザー
◆ X(旧Twitter)

特徴:
- テキスト中心で「言葉」と「人柄」が武器になるSNS
- 拡散力が高く、リポストで一気に広がる可能性も
- 考え方・ノウハウ・時事ネタなどに向いている
- コンサル・士業・情報発信系と相性が良い
ユーザー層:
- 20〜40代のビジネスパーソン・男性比率やや高め
- IT・スタートアップ・マーケティングなど情報感度の高い層

特徴:
- 実名制で、人と人のつながりをベースにしたSNS
- BtoBビジネスや地域の経営者同士のつながりに向いている
- 業界団体・商工会・コミュニティとの相性が良い
ユーザー層:
- 40〜60代のビジネスパーソン
- 地域の経営者やフリーランス
◆ TikTok(ティックトック)

特徴:
- 短い縦動画で一気に認知を広げられるSNS
- エンタメ性・おもしろさ・雰囲気が重要
- 店舗の空気感やスタッフのキャラクターを伝えるのに向いている
ユーザー層:
- 10〜30代が中心
- 若い世代へのアプローチをしたい企業と相性が良い
◆ YouTube

特徴:
- 長めの動画で深い情報を伝えられるプラットフォーム
- 専門性の高い解説・ノウハウ提供に最適
- 「この人に任せたい」という信頼をじっくり育てられる
- 集客・採用どちらにも効果が大きい
ユーザー層:
- 10〜60代まで幅広い
- 学びたい人・比較検討したい人など、目的意識の高い層
最初の一歩:明日やること3つ
ここまで聞いて、「結局何から始めればいいの?」という方も多いと思います。
SNS運用の一番難しいところは、“最初の一歩”です。明日から、次の3つだけやってみてください。
① 理想のお客さん(ペルソナ)を1人だけ書き出す
紙でもメモでも良いので、
- 年齢
- 性別
- 家族構成
- 仕事や生活の状況
- 趣味
- どんな悩みを持っているか
などを簡単に書き出してみましょう。たった1人の顔が思い浮かぶだけで、SNSの言葉はガラッと変わります。
② 発信の軸を3つだけ決める
先ほど挙げたテーマの中から、「これなら続けられそう」「自社らしい」と思うものを3つ選んでください。
例:
- 業界の豆知識
- 仕事の裏側・現場の様子
- スタッフの人柄・ストーリー
この3つさえ決まっていれば、「何を投稿しよう…」という悩みは大きく減ります。
③ SNSは1つだけ選ぶ(多くても2つまで)
最後に、どのSNSを使うかを決めます。すべてやろうとすると、ほぼ確実に続きません。
迷ったときの目安は次の通りです。
- 美容・整体・飲食・小売 → Instagram
- コンサル・士業・情報発信 → X(旧Twitter)
- 採用や社風を伝えたい → Instagram / YouTube / Facebook
- BtoBで信頼を積み上げたい → Facebook / YouTube
- 若年層向け・雰囲気勝負 → TikTok
まずは1つだけ、余裕があっても2つまで。これが中小企業が無理なく続けるコツです。
まとめ:SNSは「全部やらない」ほうがうまくいく
SNSは、検索や地図とは違い、“自分の好きな情報源”にユーザーが流れていく世界です。だからこそ、検索だけでは届かない層にアプローチできる貴重なチャネルでもあります。
ただし、短期的な売上というよりは、時間をかけてファンを育てていく施策です。
中小企業がSNSで失敗しないためのポイントは、
- 誰に届けるかを決める
- 何を伝えるかの軸を3つに絞る
- 自社に合うSNSを1〜2つに絞る
この3つだけです。
次回の「認知編その3−2」では、ネタ切れしないSNS投稿の作り方について、具体的な投稿ネタや考え方をご紹介していきます。





